鍼 灸 治 療 に つ い て
悠久なることの価値
鍼灸治療のルーツは実に紀元1世紀の中国まで遡ります。東洋医学・鍼灸治療のバイブルと言われる黄帝内経素問・霊枢が記されたのが紀元1世紀。
というと、きわめて古臭い、非科学的なイメージを持ってしまいそうです。 実は、私自身も椎間板ヘルニアで治療を受ける前はまさしくこのイメージを持ち、 「鍼で刺すと痛みがなくなる理屈が理解できない、治る自分が想像できない」と鍼灸治療に対して頑なに拒絶反応を露わにしていたものです。「それに体内に異物を刺して痛くないはずがない…!」
でも一度治療を受けてからは認識が変わりました。何本か打たれた鍼の中に、「これは効きそうだ」と思える鍼があったからです。言葉では説明できない、な ん とも言えない不思議な感触でした。(当時の私は「腐ったリンゴ(患部)をかき混ぜられた感覚」と表現していました。) どんな科学的な説明よりも、1本の 鍼が持つ「治りそうな感触」や「治った経過や経験」の方が力を持ちうることは患者を経験した者であれば容易に想像できるはずです。その後も事ある度にその鍼灸院に通い、その感触を追い求めました。すべての鍼が効いているとは思えないものの、時々ある鮮烈な感触。
以来、私は鍼灸を「非常に古くから価値を認められ続けた結果今もなお存在している治療」だと信じています。残念ながらデータベース化はされていないものの、2000年にもわたる、圧倒的な臨床データに裏付けられ、今なお存在している治療法には悠久なる時の流れを感じざるを得ません。
「黒い猫でも白い猫でも鼠をとる猫がいい猫だ」
鄧小平氏の1962年の発言です。 当時中国では農業生産が停滞しており、包産到戸という自由主義寄りの政策導入の是非をめぐって議論がありました。鄧小平氏は安徽省の諺である良い猫になぞらえて、民衆が望む、早期に農業生産が回復する方法を優先すべきだとして議論を納めたと言います。
現在は鍼灸を「一定の方式にしたがい、鍼やもぐさなどによって、身体表面の一定部位に一定の機械的、温熱的刺激を与えることによって起こる効果的な生体反応を利用し、生活機能の変調を矯正し、保健および疾病の予防または治療に応用する施術」というように西洋医学的な観点から説明しています。東洋医学が 「気」という目で確認できない概念を持ち出す以上、どうしても科学的たりえず、「鍼灸による刺激が神経系を介して血流を促し、血液という免疫機構を通じて病が治癒する」という説明にとどまらざるを得ないのです。
私は、科学を否定し、やみくもに非科学を主張するつもりはありません。組織の中では制御するためのルールが必要なこともわかっているつもりです。でも科学といえども生死の根源を説明できないわけで、まだまだ判明できていないことの領域の方が圧倒的に大きい。だから個々人はもっと価値観を広く構えるべきだと思うのです。何か具合の悪いことがあって、それが治るのであれば、西洋でも東洋でもこだわらずにいろいろと試してみればいいと思います。
兪楽(ゆらく)治療院 横浜店
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